2018年2月5日月曜日

脱落者 7 - 3

 セシリア・ドーマーはベッドの上に拘束されていた。顔は鼻が折れているので腫れていた。手術は成功しており、見た目は以前と変わらず綺麗だが、むくみはまだ引かないようだ。喉はハイネ同様良好な回復で、ベックマンは医師からの忠告もあり、あまり興奮させたり長時間喋らせないよう、仲間と打ち合わせていた。
 彼女は3人の捜査官が入室すると、首を動かしてドアの方を見た。付き添っていた保安課員が上体を少し起こしてやった。

「こんばんは、セシリア・ドーマー。保安課のベックマンだ。こちらは内務捜査班のフォーリー・ドーマー、そしてこちらは地球周回軌道防衛隊のドナヒュー軍曹だ。」

 ベックマンが紹介すると、セシリア・ドーマーは無言で頷いた。縛られている意味も捜査官が訪問した意図も理解している様子だ。感情のない目で彼等を見た。
 ベックマンは椅子をベッドの脇に引き寄せて座った。ドナヒュー軍曹には付き添いの保安課員が椅子を勧めたが、フォーリーは椅子を断って立っていた。
 さて、とベックマンが切り出した。

「気分はどうだね? 痛むか?」

 セシリア・ドーマーは小さく首を振った。質問を無視するつもりはないらしい。

「喉を痛めたそうだから、今夜はあまり多くの質問はしない。今ベッドに拘束されている理由はわかるだろうか?」

 彼女は一瞬天井に目を向けてから、かすれ声で答えた。

「私がローガン・ハイネ・ドーマーを殺したからです。」

 ベックマンはドナヒューとフォーリーを見た。2人共無言だ。セシリア・ドーマーは殺意を持ってハイネを刺したと受け取れた。

「ハイネ局長を殺した?」

とベックマンが彼女の言葉を繰り返すように尋ねた。彼女が無言で頷いた。彼は尋ねた。

「何故、彼を殺したりしたのだ?  彼はこのドームの長老だった。君達のリーダーだっただろう?」

 彼は故意に過去形で語ってみた。セシリア・ドーマーはハイネを仕留めたと思い込んでいるらしい。
 彼女は目を閉じた。

「私は彼を解放してあげたのです。私も解放される筈だった・・・」
「解放? 」
「ドーマーは囚われの身です。自覚がないだけなのです。特別な場合以外、死ぬ迄ドームの中で飼われている研究用の人間です。外の地球人には存在を知られず、宇宙のコロニー人からは珍しい動物みたいに見られています。私はそんな生活が・・・」

 彼女は咳の発作に襲われた。保安課員が酸素マスクを彼女の顔に当ててやった。
尋問が暫し中断された。