2018年2月27日火曜日

脱落者 13 - 3

 場所を地球人類復活委員会本部に移して臨時会議が開かれた。理事、委員、職員、出席出来る者は殆ど顔を出した。
 最初に改めて犠牲者に黙祷を捧げた後、キルシュナー製薬の代表が壇上に立ち、同製薬会社からテロリストの一味を出してしまったこと、製造した薬が爆薬に作り変えられたことを謝罪した。彼等の重役の1人が「青い手」のシンパで、長い歳月をかけて仲間を増やしていったのだ。
 製薬会社代表と交替して壇上に上がったハナオカ委員長が、宇宙連邦軍憲兵隊からの情報を報告した。
 製薬会社にいたテロリスト達は、アフリカ・ドームとアメリカ・ドームから薬剤のオーダーを受注した時、同時多発テロを計画した。アフリカ・ドームには、受注した薬剤をそっくり偽物にすり替えた物を送付した。アメリカ・ドームの薬剤は不安定だったので完成品ではなく未完成品を送り、現場で爆薬を完成させる計画だった。彼等にとって幸いなことに、アメリカ・ドームの薬剤管理室には彼等のメンバーが室長として勤務していた。
 ドナルド・アンガス・フェリート薬剤管理室長は部下の女性ドーマー薬剤師を騙して爆薬を完成させる為の触媒を作らせた。
 アフリカとアメリカ、どちらが先に犠牲になっても、キルシュナー製薬から送られた薬が爆薬だったと判明するには時間がかかる、とテロリスト達は読んだ。しかしアメリカ・ドームではハン博士が開発した薬に触媒は不要だったことを知っている薬剤師達がいた。彼等の証言で、キルシュナー製薬に潜んでいたテロリスト達の存在が判明し、逮捕された彼等の関係者を手繰って拠点を発見したのだ。
 憲兵隊の捜査で全てが解明された、と語るハナオカの言葉をケンウッドとヴェルティエンはちょっと白けた気分で聞いていた。捜査をしたのは、遺伝子管理局内務捜査班のフォーリーではなかったか? するとハナオカがこう言った。

「もっとも、憲兵隊が有力な情報を得られたのは、アフリカ、アメリカ両ドームで働く執政官達とドーマー達の協力があってのことです。我々は彼等を誇りに思います。」

 満場の拍手でハナオカは報告を終えると、会議の本来の目的に移った。

「さて・・・我々はルパート・シュバルツバッハ博士の後任のアフリカ・ドーム長官を決めなければなりません。副長官のアルフォンソ・マルセル博士はまだ怪我の治療中で長官職の激務をこなすことは難しいのです。本人も今は長官就任を望んでおりません。それで、新しいアフリカ・ドーム長官と副長官代理を決めたいと思います。先ずは、候補に立たれる方はおられますかな?」