2018年4月22日日曜日

泥酔者 10 - 3

 ケンウッドは1日の職務を終えて運動もして、入浴を終え、やっとベッドに入ったところで、保安課からの連絡で起こされた。布団から腕を伸ばして端末を取った。

「バーで乱闘騒ぎがありまして・・・」

とアーノルド・ベックマン課長が報告した。

「執政官5名と研究員1名を拘束しました。それから居合わせて乱闘を止めようとした3名からも事情を聴取しています。」
「乱闘?」

 ケンウッドは面倒臭いと思った。バーでの乱闘とは、酔っ払いの喧嘩だ。そんな騒ぎは年に数回起きていたので、ドームでも珍しい事ではなかった。

「全員コロニー人だろう?」
「そうです。」
「まさか身元不明者がいるなんてことはないな?」

 ドームの中の人間は全員身元がしっかりしている。

「ええ・・・」

とベックマンはちょっと躊躇ってから、続けた。

「ブラコフ副長官と貴方の秘書のスメア氏が巻き込まれまして、事情聴取を受けています。」
「はぁ?」

 ケンウッドはやっと体を起こした。

「ガブリエルとミズ・スメアは乱闘の当事者ではないのだな?」
「止めようとした方です。」

 ベックマンは付け足した。

「止めようとなさって、副長官は顔を殴られて転倒、スメア氏が相手を殴り倒しました・・・」

 マジか・・・ケンウッドは思わず片手で顔を覆った。

「ガブに怪我は?」
「ちょっと殴られた箇所が赤くなっていますが、それだけです。スメア氏が殴った相手は鼻血を出しました。」

 立派な傷害罪だ。

「他に怪我人は?」
「乱闘の当事者たちがそれぞれ打撲傷を追っていますが、いずれも軽傷です。」
「そうか・・・では今まで通りの手順で処理をお願いする。副長官と秘書も用が済めば返してやってくれ。明日、当事者全員、小会議室に出頭する様に。」
「わかりました。」

 そしてベックマンは囁いた。

「ドーマーがいなくて幸いでした。」