ビル・フォーリー・ドーマーは遺伝子管理局内務捜査班のチーフだ。上司だったジャン=カルロス・ロッシーニ・ドーマーが引退して養育棟の教育係に転属したので名実共に責任者となった。もっとも殆どのコロニー人は彼が以前から内務捜査班のチーフだと思っていたので、この人事異動に気が付いていないのだ。ああ、長官秘書のドーマーが引退したんだなぁと言う程度の認識だ。
内務捜査班は執政官の違反を取り締まったり、ドーマー同士の間で起きる事件を捜査するドームの警察みたいな組織だ。チームのメンバーの半分は潜入捜査で維持班や研究助手に混じって日常の仕事をしている。コロニー人にとって厄介な連中だが、ドーマー達にも煙たい存在なのだ。
「フォーリーを探しているって? 本部にいないのかね?」
「午後から内勤を上がってどっかへ行っちゃったんす。ジムにもプールにもいなくて。」
「図書館で調べ物でもしているのかな?」
「あー、そっちはまだでした。先にお昼食べようと思って。」
緊急の要件ではないらしい。ケンウッドは滅多に人の会話に登場しない人物をクロエルが探していること自体に興味を抱いた。
「フォーリーに何の用事だね?」
すると、クロエルは周囲を素早く見回し、テーブルの上に上体を屈めて低い声で言った。
「内務捜査班に調べてもらいたい執政官がいるんす。」
長官に向かって執政官を調べて欲しいと言うとは、穏やかではない。ケンウッドが見つめ返すと、彼は続けた。
「正式にはまだ執政官じゃありませんけど・・・」
ケンウッドはピンと来た。彼も正にその人物について調査しようとしているのだ。彼は用心深く尋ねた。
「ハリス博士か?」
クロエルが頷いた。
「あの人、何だかおかしいっす。」
内務捜査班は執政官の違反を取り締まったり、ドーマー同士の間で起きる事件を捜査するドームの警察みたいな組織だ。チームのメンバーの半分は潜入捜査で維持班や研究助手に混じって日常の仕事をしている。コロニー人にとって厄介な連中だが、ドーマー達にも煙たい存在なのだ。
「フォーリーを探しているって? 本部にいないのかね?」
「午後から内勤を上がってどっかへ行っちゃったんす。ジムにもプールにもいなくて。」
「図書館で調べ物でもしているのかな?」
「あー、そっちはまだでした。先にお昼食べようと思って。」
緊急の要件ではないらしい。ケンウッドは滅多に人の会話に登場しない人物をクロエルが探していること自体に興味を抱いた。
「フォーリーに何の用事だね?」
すると、クロエルは周囲を素早く見回し、テーブルの上に上体を屈めて低い声で言った。
「内務捜査班に調べてもらいたい執政官がいるんす。」
長官に向かって執政官を調べて欲しいと言うとは、穏やかではない。ケンウッドが見つめ返すと、彼は続けた。
「正式にはまだ執政官じゃありませんけど・・・」
ケンウッドはピンと来た。彼も正にその人物について調査しようとしているのだ。彼は用心深く尋ねた。
「ハリス博士か?」
クロエルが頷いた。
「あの人、何だかおかしいっす。」