ケンウッドは長い間食べ物を口に入れていなかった様な気がした。ガッついて食べるのはみっともないと思いつつ、朝食にたっぷりと食べてしまった。しかもハイネが目の前で山盛りのパンケーキを食べたので、それに釣られたのだ。
「互いに歳なんだから控えないと・・・」
ヤマザキ・ケンタロウが呆れて2人を眺めた。彼はケンウッドとハイネにアイダ・サヤカが辞意を撤回すると報告に来たと教えに来たのだ。昨日は忙しかったので、長官と出産管理区長がドームを留守にしていたことを気づかなかった。ハイネがケンウッドを見たので、ケンウッドも見返した。そして2人でプッと吹き出した。ヤマザキは彼等が何を喜んでいるのかわからない。アイダが残ってくれると言う前から、何か浮かれているのだから。
何だかわからないが、ヤマザキは取り敢えずハイネに「おめでとう」と言った。
「彼女はここに残ってくれる。君も安心だろう?」
「勿論です。」
ハイネは医療区長も抱き締めたかったが、自重した。食堂内には既にドーマー達が集まり始めており、大きなテーブルでは遺伝子管理局の局員達が朝の打ち合わせ会を始めていた。
ケンウッドが口の周りに付着したシロップを紙ナプキンで拭いながら提案した。
「今日はこれから忙しくなるので、昼前の定例打ち合わせ会を今やってしまって良いかな?」
「副長官がおられませんが?」
「ガブリエルは今日、後任候補の面接をする。さっきのシャトルで3人が到着したんだ。送迎フロアで出会ったろう?」
「送迎フロア?」
とヤマザキが怪訝な表情で呟いた。
「ケンさん、何処かへ行っていたのか? まさか長官自ら候補者のお出迎えじゃあるまい?」
ケンウッドはそっと周囲に目を配った。幸い誰もこちらのテーブルに興味はなさそうだった。
「月の本部へ出張っていたんだ。アイダ博士も一緒に。」
ヤマザキが彼を見て、それからハイネを見た。ハイネはいつもの彼に戻っており、パンケーキの上に載せたフワフワのチーズ入りホイップクリームをいかにして崩さずに最後迄残すか苦心していた。ヤマザキはスプーンを取り上げ、横からハイネのホイップクリームを掬い取って口に入れた。アッとハイネが振り向いた。
「ドクター!」
「人の話を聞いていなかった罰だ。」
「ちゃんと聞いていましたよ!」
「そうかな? 上の空だったみたいだが・・・」
「聞いてました!・・・私のクリーム・・・」
チーズが絡むと子供になってしまう95歳の男に、ヤマザキは笑いながら、お昼に好きなデザートを譲ってやるよ、と約束した。
「互いに歳なんだから控えないと・・・」
ヤマザキ・ケンタロウが呆れて2人を眺めた。彼はケンウッドとハイネにアイダ・サヤカが辞意を撤回すると報告に来たと教えに来たのだ。昨日は忙しかったので、長官と出産管理区長がドームを留守にしていたことを気づかなかった。ハイネがケンウッドを見たので、ケンウッドも見返した。そして2人でプッと吹き出した。ヤマザキは彼等が何を喜んでいるのかわからない。アイダが残ってくれると言う前から、何か浮かれているのだから。
何だかわからないが、ヤマザキは取り敢えずハイネに「おめでとう」と言った。
「彼女はここに残ってくれる。君も安心だろう?」
「勿論です。」
ハイネは医療区長も抱き締めたかったが、自重した。食堂内には既にドーマー達が集まり始めており、大きなテーブルでは遺伝子管理局の局員達が朝の打ち合わせ会を始めていた。
ケンウッドが口の周りに付着したシロップを紙ナプキンで拭いながら提案した。
「今日はこれから忙しくなるので、昼前の定例打ち合わせ会を今やってしまって良いかな?」
「副長官がおられませんが?」
「ガブリエルは今日、後任候補の面接をする。さっきのシャトルで3人が到着したんだ。送迎フロアで出会ったろう?」
「送迎フロア?」
とヤマザキが怪訝な表情で呟いた。
「ケンさん、何処かへ行っていたのか? まさか長官自ら候補者のお出迎えじゃあるまい?」
ケンウッドはそっと周囲に目を配った。幸い誰もこちらのテーブルに興味はなさそうだった。
「月の本部へ出張っていたんだ。アイダ博士も一緒に。」
ヤマザキが彼を見て、それからハイネを見た。ハイネはいつもの彼に戻っており、パンケーキの上に載せたフワフワのチーズ入りホイップクリームをいかにして崩さずに最後迄残すか苦心していた。ヤマザキはスプーンを取り上げ、横からハイネのホイップクリームを掬い取って口に入れた。アッとハイネが振り向いた。
「ドクター!」
「人の話を聞いていなかった罰だ。」
「ちゃんと聞いていましたよ!」
「そうかな? 上の空だったみたいだが・・・」
「聞いてました!・・・私のクリーム・・・」
チーズが絡むと子供になってしまう95歳の男に、ヤマザキは笑いながら、お昼に好きなデザートを譲ってやるよ、と約束した。