翌朝、ケンウッドはいつもの時刻に起床して、いつものジョギングに出かけた。重力の問題があるから、ドーマー達のペースに比べるとゆっくりめだが、コロニー人では速い方だ。相変わらず問題が多いドーム行政だが、頭の中をリフレッシュさせて機嫌良く走っていると、後ろから軽快に足音を響かせてローガン・ハイネ・ドーマーが追いついてきた。
「おはようございます、長官!」
「おはよう、局長!」
真剣に運動をしている時は、ハイネは決してコロニー人に歩調を合わせてくれない。あっという間にケンウッドは置き去りにされた。ケンウッドは慌てず、意地になることもなく、マイペースで走り続け、ジムに入った。早起きのドーマー達や夜勤を終えたドーマー達が早朝にも関わらず賑やかにトレーニングに励んでいた。もっとも半時間もすれば、もっと混み合うのだ。
ハイネ局長は筋トレのマシンのそばにいた。女性執政官数名がそこでトレーニングをしており、局長はそこで1人の女性からメモの様な物を手渡されたところだった。
ケンウッドはそのままロッカールームに行ってシャワーを浴びた。新しい服を身につけていると、局長がやって来た。
「出産管理区から苦情が来ています。」
と言って、先刻のメモを出して来た。ケンウッドが見ると、アイダ・サヤカの手書きで「ドーム出口でうろついている不審な2人組みの男性あり」とあった。
ケンウッドは保安課から聞いていた報告を思い出した。
「確か、遺伝子管理局もその連中から声を掛けられたと聞いたが?」
「ワグナー・ドーマーです。ハリス博士はこちらのドームにいるのかと訊かれたのです。」
「取り立て屋だな。」
「ケンタロウもそう言っていました。」
「連中はハリスが正規採用になったので、外へ出かけるのを待っているんだ。」
「ハリス博士は外出される用事でもあるのですか?」
「研究用サンプル採取が必要なら出かけるだろう。だが彼は来たばかりだ。当分は出る用事はないだろう。」
「ではハリス博士は暫くは安全圏内におられるのですな。」
「しかし、ドームに来る地球人達は気味が悪いと感じるだろうな。」
ドームは地球人が生まれる神聖な場所だ。そこに博打の借金を取り立てに来る宇宙のヤクザがいては落ち着かないだろう。それにしても・・・
ケンウッドは先刻感じたささやかな疑問を口にした。
「何故アイダ博士はメッセではなく手紙で君に連絡を取ったりするのだ?」
「それは・・・・」
ハイネは考え込むふりをした。
「取り立て屋の存在を嫌だと感じたのが、彼女ではなく別の女性だったからでしょう。彼女自身は外に出ていないのではありませんか?」
「つまり?」
「メッセは彼女個人の感想ですが、手紙は出産管理区の女性達の感想です。」
なんだかよくわからないが、出産管理区の女性達はハイネと言葉を交わせて喜んでいたっけ・・・。ケンウッドは秘密の夫を独占しない様に心がけるアイダ・サヤカの努力を健気に感じた。
「おはようございます、長官!」
「おはよう、局長!」
真剣に運動をしている時は、ハイネは決してコロニー人に歩調を合わせてくれない。あっという間にケンウッドは置き去りにされた。ケンウッドは慌てず、意地になることもなく、マイペースで走り続け、ジムに入った。早起きのドーマー達や夜勤を終えたドーマー達が早朝にも関わらず賑やかにトレーニングに励んでいた。もっとも半時間もすれば、もっと混み合うのだ。
ハイネ局長は筋トレのマシンのそばにいた。女性執政官数名がそこでトレーニングをしており、局長はそこで1人の女性からメモの様な物を手渡されたところだった。
ケンウッドはそのままロッカールームに行ってシャワーを浴びた。新しい服を身につけていると、局長がやって来た。
「出産管理区から苦情が来ています。」
と言って、先刻のメモを出して来た。ケンウッドが見ると、アイダ・サヤカの手書きで「ドーム出口でうろついている不審な2人組みの男性あり」とあった。
ケンウッドは保安課から聞いていた報告を思い出した。
「確か、遺伝子管理局もその連中から声を掛けられたと聞いたが?」
「ワグナー・ドーマーです。ハリス博士はこちらのドームにいるのかと訊かれたのです。」
「取り立て屋だな。」
「ケンタロウもそう言っていました。」
「連中はハリスが正規採用になったので、外へ出かけるのを待っているんだ。」
「ハリス博士は外出される用事でもあるのですか?」
「研究用サンプル採取が必要なら出かけるだろう。だが彼は来たばかりだ。当分は出る用事はないだろう。」
「ではハリス博士は暫くは安全圏内におられるのですな。」
「しかし、ドームに来る地球人達は気味が悪いと感じるだろうな。」
ドームは地球人が生まれる神聖な場所だ。そこに博打の借金を取り立てに来る宇宙のヤクザがいては落ち着かないだろう。それにしても・・・
ケンウッドは先刻感じたささやかな疑問を口にした。
「何故アイダ博士はメッセではなく手紙で君に連絡を取ったりするのだ?」
「それは・・・・」
ハイネは考え込むふりをした。
「取り立て屋の存在を嫌だと感じたのが、彼女ではなく別の女性だったからでしょう。彼女自身は外に出ていないのではありませんか?」
「つまり?」
「メッセは彼女個人の感想ですが、手紙は出産管理区の女性達の感想です。」
なんだかよくわからないが、出産管理区の女性達はハイネと言葉を交わせて喜んでいたっけ・・・。ケンウッドは秘密の夫を独占しない様に心がけるアイダ・サヤカの努力を健気に感じた。