ドーマーには酒や博打はともかく、夜逃げや借金や取り立てなど無縁の話だ。ハイネ遺伝子管理局長は映画やドラマの中で見る出来事が現実にドームの中の人間の身に起きていると知ると、興味津々で保安課長に尋ねた。
「もし、今ハリス博士を外へ放り出したら、どうなります?」
「ハイネ・・・」
ケンウッドが憂い顔で振り返ったが、ハイネは気づかないふりをした。ベックマンは当然だと言う顔で答えた。
「取り立て屋が見つけたら捕まえて、すぐにシャトルに乗せて火星へ連れて行くでしょうな。」
「ハリスがシャトルに乗るのを拒否したら?」
「連中は『召喚状』と言う物を持っています。警察の逮捕状みたいなもので、それを提示して借主を乗り物に乗せます。法的に有効なのです。借金を踏み倒すのは犯罪に等しいですから。ただ、捕まえた借主に暴力を振るって支払わせるのは、別の犯罪になります。」
「取り立て屋は、ハリスを連れて行く権利だけ持っているのですね?」
「そうです。だから憲兵隊も連中がハリスを捕まえることは阻止出来ません。捕まったハリスが傷害や殺害されなければ動けないので、捕まらない様に我々に彼を守れと要請して来ているのです。」
「理解しました。有り難う。」
ハイネが納得したので、ベックマンはケンウッドに彼の考えを告げた。
「私生活で問題のある人物を執政官として雇用するのはどうかと思います。10日間彼を置くのは構いませんが、任官期日が迫っている筈です。どうなさいますか?」
「それなんだ・・・」
ケンウッドはハリスの経歴がアヤフヤなことをハイネとベックマンに伝えた。
「地球人類復活委員会が雇う人間の身元は確かな筈なのに、何故ハリスの専門分野が公式サイトと自己申告内容では異なるのか? 委員会でも急いで照会に取り掛かってくれている筈なんだ。これは、月からの返答待ちだ。」
ベックマンとハイネが顔を見合わせた。ベックマンがケンウッドに提案した。
「ハリス本人を呼んで質してみては如何です?」
「そう思ったのだが、どうもあの人物はのらりくらりとこちらの質問を交わすので、私も苦手で・・・内務捜査班もコロニー側の調査は出来ないからなぁ。」
他人を窮地に追い込むのが苦手のケンウッド長官を、ハイネが謎の微笑みを浮かべて眺めた。
「しかし、公式サイトを見つけたのは、保安課でしょう? 地球外のネット情報だと思いますが?」
ケンウッドは、ハッとした。それがハイネとベックマンを呼んだ本当の理由だ。
「もし、今ハリス博士を外へ放り出したら、どうなります?」
「ハイネ・・・」
ケンウッドが憂い顔で振り返ったが、ハイネは気づかないふりをした。ベックマンは当然だと言う顔で答えた。
「取り立て屋が見つけたら捕まえて、すぐにシャトルに乗せて火星へ連れて行くでしょうな。」
「ハリスがシャトルに乗るのを拒否したら?」
「連中は『召喚状』と言う物を持っています。警察の逮捕状みたいなもので、それを提示して借主を乗り物に乗せます。法的に有効なのです。借金を踏み倒すのは犯罪に等しいですから。ただ、捕まえた借主に暴力を振るって支払わせるのは、別の犯罪になります。」
「取り立て屋は、ハリスを連れて行く権利だけ持っているのですね?」
「そうです。だから憲兵隊も連中がハリスを捕まえることは阻止出来ません。捕まったハリスが傷害や殺害されなければ動けないので、捕まらない様に我々に彼を守れと要請して来ているのです。」
「理解しました。有り難う。」
ハイネが納得したので、ベックマンはケンウッドに彼の考えを告げた。
「私生活で問題のある人物を執政官として雇用するのはどうかと思います。10日間彼を置くのは構いませんが、任官期日が迫っている筈です。どうなさいますか?」
「それなんだ・・・」
ケンウッドはハリスの経歴がアヤフヤなことをハイネとベックマンに伝えた。
「地球人類復活委員会が雇う人間の身元は確かな筈なのに、何故ハリスの専門分野が公式サイトと自己申告内容では異なるのか? 委員会でも急いで照会に取り掛かってくれている筈なんだ。これは、月からの返答待ちだ。」
ベックマンとハイネが顔を見合わせた。ベックマンがケンウッドに提案した。
「ハリス本人を呼んで質してみては如何です?」
「そう思ったのだが、どうもあの人物はのらりくらりとこちらの質問を交わすので、私も苦手で・・・内務捜査班もコロニー側の調査は出来ないからなぁ。」
他人を窮地に追い込むのが苦手のケンウッド長官を、ハイネが謎の微笑みを浮かべて眺めた。
「しかし、公式サイトを見つけたのは、保安課でしょう? 地球外のネット情報だと思いますが?」
ケンウッドは、ハッとした。それがハイネとベックマンを呼んだ本当の理由だ。