2018年4月7日土曜日

泥酔者 7 - 7

 人事のゴッドフリー・シャベス委員は、アメリカ・ドームのセキュリティ問題とレイモンド・ハリスの経歴について調査しますと言って、あちらの方で通信を切った。
 ケンウッドは溜め息をついた。レイモンド・ハリスの身元調査は地球人類復活委員会に任せるしか方法がない。しかし、セキュリティの方は・・・
 彼は端末を出した。電話を掛けると、相手はまだいつも通り仕事中だった。

「ハイネです。」
「ケンウッドだ。大至急話がある。こちらへ来るか、私がそっちへ行くか、決めてくれ。」

 ハイネは一瞬沈黙して、それから尋ねた。

「怒ってます?」
「わからん。」

 ケンウッドはこの件の責任者は誰になるのだろうと思いつつ、言った。

「緊急事案だ。ベックマンも呼ぶから、兎に角来てくれ。」
「了解しました。」

 ローガン・ハイネ・ドーマーは決して執政官に逆らわない。ケンウッドは己の心に落ち着けと言い聞かせた。ハイネはこの件に無関係かも知れない。
 アーノルド・ベックマン保安課長にも声を掛け、部下達が到着する迄ケンウッドは自分で休憩スペースでお茶を淹れて、秘書と共に休憩した。
 チャーリー・チャンとジャクリーン・スメアは長官が本来の仕事以外のことで振り回されているかの様に見えて、ボスの健康を気にした。

「長官、ストレスを溜めてらっしゃるのではありませんか?」
「かなりお疲れの様子です。今日は早めにお休みになられては? 今朝出張から戻られたばかりですし・・・」
「有難う。だが、問題が片付かないと私は落ち着かないんだ。」

 熱いお茶を時間を掛けて飲むうちに、ハイネが到着した。応対に出たスメアが笑顔になったので、すぐわかった。ローガン・ハイネ・ドーマーはすっかりいつのも遺伝子管理局長の威厳を取り戻し、ゆったりと自席に歩み寄った。

「ベックマン課長もお呼びと言うことは、セキュリティの問題でしょうか?」
「うん・・・月から指摘される迄私は気付かなかった。」

 ケンウッドは固い表情で答え、それから休憩スペースを顎で示した。

「お茶を淹れようか?」
「いえ、結構です。」

 ハイネは探りを入れる様な目でケンウッドを見た。今朝月から戻ったばかりのケンウッドは疲れていたし、仕事が溜まって焦ってもいたが、こんな緊張はしていなかった。今彼が遺伝子管理局長と保安課長を呼んだ問題は、その後で起きたのだ。
 お茶を断られたので、ケンウッドは一人でカップに残ったお茶を時間を掛けて飲み干し、カップを休憩スペースに片付けたところへ、ベックマンがようやく現れた。