2016年9月11日日曜日

JJのメッセージ 10

 ダリルとライサンダーのセイヤーズ父子と、ラムゼイ博士と秘書ジェリー・パーカーの遺伝子的共通点とは何だろう? ライサンダーはひどく気になったが、遺伝子の知識がないので、さっぱり見当がつかなかった。父親なら管理局で働く為に子供時代から遺伝子に関する教育を受けたはずだが、それはライサンダーには遺伝してくれなかったらしい。
それとも、父親は授業をさぼってちゃんと学習しなかった・・・とか?
 兎に角、JJは、パーカーと博士には、他の男性たちとは異なるものがあると言った。それが何なのか、彼女は巧く説明出来ない。塩基配列を指して、ここが違う、と言われても、ライサンダーにはどう違うのかわからないのだ。

 ラムゼイ博士の隠れ家は、メキシコ風の白い壁の農家を改装した建物で、パティオがある。噴水や植木や草花があって、外出がままならない者にとっては、生き抜きの場になった。
 台所仕事が一段落付くと、JJは庭に出て、植物や空を流れる雲を眺めて過ごした。
植物は、様々な塩基配列で面白い。眺めていて飽きない。昆虫が飛んで来て、花粉を雌しべに受粉させて行く。細胞分裂が始まる。昆虫が飛ぶ。人間でもない植物でもない塩基配列の塊が飛び回っている。
 ふと、彼女は風の中に聞いたことがない音が混ざったことに気が付いた。
空を見上げると、ヘリコプターが飛んでいた。それはコロニー人の技術で製造された静音で飛ぶヘリだったが、航空機の知識に疎い少女に、普通のヘリとの違いはわからなかった。そんなに高度を取らずに飛んでいたので、JJには男性が扉のないヘリの側面から双眼鏡で地上を眺めているのが見えた。
 彼女は男性がパティオを見つけた時に、手を振った。空を飛んでいる人に少し興味があったからだ。ヘリは一旦通り過ぎ、暫くして、戻って来た。
今度は、さらに音を落として、速度も落としていた。 ゆっくりと、静かにパティオに影を落とさない様にコース取りに気を遣いながら、農家の屋根の上を飛んで、JJの存在を確かめている様に見えた。
 JJはもう1度手を振った。男が手を振り返してくれた。ヘリが旋回して飛び去る迄、彼は3回農家の上を飛び回り、彼女の映像を撮影した。
 シェイが台所で呼んだので、JJは屋内に入った。

「卵を切らしちまったのよ。鶏小屋で卵を集めて来て頂戴。新しいのをお願いね。」