遺伝子管理局の本部局員と支局職員の違いは、ドーマーかドーマーでないか、もしくは、ドーマーか現地採用か、と言うことだ。そして本部局員は支局内をフリーパスで動けた。支局の警備員はドーマーたちが支局長の部屋を勝手に捜査し、勝手にコンピュータの中を覗くのを黙って見ているほかなかった。
北米南部班第1チームのチームリーダー、クラウス・フォン・ワグナー・ドーマーは部下をローズタウンに送れと言う本部の指示に従ったが、当人はまだ中西部支局に残っていた。行方をくらませた支局長レイ・ハリスの銀行口座を差し押さえ、支局長の所有するファイルは全部本部へ電送した。
本部指令を無視して居残っていたアレクサンドル・キエフ・ドーマーが衛星の監視システムで砂漠を逃げていくハリスの自家用車を補足した。キエフは、仕事に関しては本物のプロなのだ。チーフに対する偏愛さえなければ・・・
こいつが昨日飲んだ牛の放牧場の池の水で腹でもこわして、それが元で人格が変わってまともになればなぁ、とクラウスは残念に思った。
「大きな画面がないので詳細は無理ですが、支局長の車ですよ。」
キエフがコンピュータのスクリーンに画像を映してクラウスに見せた。
クラウスは画像を縮小表示して、ハリスの現在地と支局との距離を測った。すぐに支局裏にある空港に電話を入れた。
「大至急高速ヘリを用意してもらいたい。パイロットは僕だ。これからそっちへ行く。」
クラウスが部屋から出ると、キエフが付いて来た。鬱陶しいが他の部下は飛行機に乗せてしまったので、我慢するか・・・
支局の航空部は、昨日支局長が用意させたヘリが本部局員を誘拐してしまったので、名誉挽回に所有する機体で最高の物を大至急準備した。
「買収されていたパイロットは戻ったのか?」
「いいえ、自宅にも戻っていません。逃げたのでしょう。警察に連絡して今日から捜索してもらう手筈です。」
支局は長を失って混乱するだろう。地球人復活プロジェクトの業務が滞ってはいけない。大至急、代理支局長を本部から派遣してもらおう、とクラウスは冷静に考えた。
支局長秘書のブリトニー嬢が、犬を従えて空港へ見送りに来た。
「ワグナーさん、今日も平常の業務を行って良いでしょうか? 大勢の人が朝早くから順番を待っています。支局は休む訳にはいきません。」
クラウスは彼女を振り返った。若い女性らしい軽装で、局員たちにいつも愛想を振りまいているだけの薄ぺっらな女性だと今まで思っていたが、この様な事態になると意外にしっかりしている。
ここに支局長代理がいるじゃないか。 第1、支局の仕事を仕切っているのは実際のところ、彼女だろう? ハリスはお飾りだったはずだ。
クラウスはにっこり笑った。ブリトニー嬢がちょっと赤くなった。彼が優しく言った。
「平常業務を遂行して下さい。今は貴女が頼りです。混乱が収まる迄、支局の管理をお願いします。」
彼とキエフがヘリコプターに乗り込んで飛び去って見えなくなる迄、彼女はずっと見つめていた。
「ああ、どうしよう・・・胸キュンだわ。あの人、奥さんがいるのに・・・」
北米南部班第1チームのチームリーダー、クラウス・フォン・ワグナー・ドーマーは部下をローズタウンに送れと言う本部の指示に従ったが、当人はまだ中西部支局に残っていた。行方をくらませた支局長レイ・ハリスの銀行口座を差し押さえ、支局長の所有するファイルは全部本部へ電送した。
本部指令を無視して居残っていたアレクサンドル・キエフ・ドーマーが衛星の監視システムで砂漠を逃げていくハリスの自家用車を補足した。キエフは、仕事に関しては本物のプロなのだ。チーフに対する偏愛さえなければ・・・
こいつが昨日飲んだ牛の放牧場の池の水で腹でもこわして、それが元で人格が変わってまともになればなぁ、とクラウスは残念に思った。
「大きな画面がないので詳細は無理ですが、支局長の車ですよ。」
キエフがコンピュータのスクリーンに画像を映してクラウスに見せた。
クラウスは画像を縮小表示して、ハリスの現在地と支局との距離を測った。すぐに支局裏にある空港に電話を入れた。
「大至急高速ヘリを用意してもらいたい。パイロットは僕だ。これからそっちへ行く。」
クラウスが部屋から出ると、キエフが付いて来た。鬱陶しいが他の部下は飛行機に乗せてしまったので、我慢するか・・・
支局の航空部は、昨日支局長が用意させたヘリが本部局員を誘拐してしまったので、名誉挽回に所有する機体で最高の物を大至急準備した。
「買収されていたパイロットは戻ったのか?」
「いいえ、自宅にも戻っていません。逃げたのでしょう。警察に連絡して今日から捜索してもらう手筈です。」
支局は長を失って混乱するだろう。地球人復活プロジェクトの業務が滞ってはいけない。大至急、代理支局長を本部から派遣してもらおう、とクラウスは冷静に考えた。
支局長秘書のブリトニー嬢が、犬を従えて空港へ見送りに来た。
「ワグナーさん、今日も平常の業務を行って良いでしょうか? 大勢の人が朝早くから順番を待っています。支局は休む訳にはいきません。」
クラウスは彼女を振り返った。若い女性らしい軽装で、局員たちにいつも愛想を振りまいているだけの薄ぺっらな女性だと今まで思っていたが、この様な事態になると意外にしっかりしている。
ここに支局長代理がいるじゃないか。 第1、支局の仕事を仕切っているのは実際のところ、彼女だろう? ハリスはお飾りだったはずだ。
クラウスはにっこり笑った。ブリトニー嬢がちょっと赤くなった。彼が優しく言った。
「平常業務を遂行して下さい。今は貴女が頼りです。混乱が収まる迄、支局の管理をお願いします。」
彼とキエフがヘリコプターに乗り込んで飛び去って見えなくなる迄、彼女はずっと見つめていた。
「ああ、どうしよう・・・胸キュンだわ。あの人、奥さんがいるのに・・・」