2016年9月11日日曜日

JJのメッセージ 7

 ポール・レイン・ドーマーは副長官が苦手だった。ラナ・ゴーンはいつも彼の弱点を突いてくる。だから彼女の意見には反論が出来ない。それにしても、病室で会見するのだろうか?
 305号室の前には、保安要員が立っていて、ポールを認めると頷いてドアを開けてくれた。 ポールは疑問を口にすることなく、室内に入った。
 ベッドの上にダリル・セイヤーズ・ドーマーが横たわっていた。そのやつれ具合に、ポールはギョッとした。2週間前、最後に彼を見たのは中央研究所の食堂だ。あの時のダリルは元気そのもので、女性たちと世間話をしていた。
 ダリルは半眼を開いてぼんやり天井を見ていた。ポールが近づいても反応しない。ポールは不安に襲われた。一体、どうしてしまったんだ? 彼は恐る恐る声を掛けた。

「やぁ、ダリル・・・」

 ダリルが首をわずかに動かして、視線を彼の方へ向けた。それっきり反応がない。
俺がわからないのか? ポールの不安は急激に恐怖へと変化しかけた。
その時、ダリルが瞬きした。

「ポール?」

夢を見ている様に呟き、それから自身の声で目が覚めたかの様に、目を大きく開いた。

「ポール!」

やせ細った腕で体を支えて起き上がろうとしたので、ポールは駆け寄って抱き起こした。

「どうしたんだ、一体・・・?」

すると、ダリルが彼の肩にしがみつきながら、微かに笑った。

「へまをやった・・・」

悪戯を失敗した子供みたいな笑みだ。
 病室のドアが開いたが、ポールは気にせずにダリルにキスをした。今、2人を引き離そうとする者がいても、梃子でも離れないからな。そんな気分だった。
 咳払いが聞こえて、ダリルの方から唇を離した。 ポールは気配で、ラナ・ゴーンの入室を悟った。 ダリルの顔から目を離さずに尋ねた。

「いつから、こんな状態なんです?」

このやつれ具合は昨日今日のことではない。ダリルはずっと具合が悪かったはずだ。それなのに、誰も教えてくれなかった。

「2週間前からです。」

 ラナ・ゴーンが答えた。心なしか、安堵した声だった。