2016年9月10日土曜日

JJのメッセージ 2

 「おや、もう歩けるのかね? 驚異の回復力だな。」

老人が笑いながら連れの男を振り返った。若い方が呟いた。

「どんな遺伝子なんでしょうね。」

 ライサンダーは急に不安を覚えた。

この人たちはメーカーだ!!

「賢い子だね、儂等が何者か、もうわかったらしいよ。」

老人がまた笑った。彼はJJを見た。JJは恩人が何者かまだわからないが、ライサンダーが警戒を始めたことはわかった。彼女は彼に寄り添った。
ライサンダーは取り敢えず、彼らに助けられたことはわかっていたので、笑顔はなしで礼を言った。

「助けてもらって有り難う。俺たち、もう行かなくちゃ・・・」
「何処へだね?」

老人と男は出入り口を塞ぐ形で立っている。ライサンダーは彼らを突き飛ばして逃げるのは可能だろうと思えたが、JJが付いてこられるだろうか?

「儂等は君たちをどうこうしようとは思わんよ。ただ、君たちは夜中にびしょ濡れで儂の農場の外れにいたのでな、保護しただけだ。君は脚を折って気絶していたし、女子は口が利けない。思考翻訳機がないので、筆談でしか話せない。行く所がないので、ここに留め置いただけさ。
 どうしても出て行くと言うなら、止めはしないが・・・」

 老人は少年少女の顔を見比べた。

「遺伝子管理局とその協力要請を受けた警察が男女の子供2人を探していると聞いてね、ちょっと心配だね。」

ライサンダーは、JJの顔を覗き込んだ。JJが彼の腕をぎゅっと握った。
どっちが安全なのだ? 管理局か、メーカーか?

「あんたの名前を聞いてもいいかな、お爺さん? 俺は、ライサンダーだ、多分、その名前で手配されているんだろう?」
「ああ・・・ライサンダー・・・」

老人は心底嬉しそうに目を細めた。

「お帰り、ライサンダー、儂が創った芸術作品よ、儂はおまえの創造主、ラムゼイだ。」