2016年9月24日土曜日

トラック 6

 コンテナトラックの後ろへ廻ると、締めたはずの錠が開いていた。 ライサンダーは手に持っていたハンバーガーの袋をそっと地面に置いた。ポール・レイン・ドーマーが中から開けたはずがない。誰かが助けに来たのか? それとも・・・
 中の気配を伺うつもりで耳を扉に近づけた時、中で重たい物がコンテナの壁にぶつかって車体が揺れた。
 ライサンダーは勢いよく扉を開いた。
 薄暗かった荷台の中に日光が差し込んだ。
 金属の輝きが目に入った瞬間、ライサンダーは叫んでいた。

「積荷泥棒だ!!!」

 周辺にいたトラックドライバーたちが振り向いた。
ライサンダーは中に居た男がナイフを振りかざしながら跳びだして来た時、素早く身をかわしてやりすごした。男は彼に目もくれず、走り去ろうとしたが、集まって来たドライバーたちに捕まった。

「積荷泥棒は許さねぇ!」
「この野郎、叩きのめしてやる!」

 男が何か言い訳しようとしたのだが、ドライバーに混ざったメーカーに間髪を容れず殴りつけられた。忽ちリンチ状態になった。
 ライサンダーはその隙に荷台に入ってドアを閉めた。
 ポール・レイン・ドーマーは片側の側面に背を預けて座っていた。少々息が荒いが怪我はしていない様子だ。 ライサンダーが猿轡を外してやると、大きく息を吐いた。

「大丈夫か?」
「きわどいタイミングで戻ってくれて、助かった。」
「積荷泥棒?」
「いや・・・」

ポールは忌々しげに説明した。

「昨日、俺と部下を誘拐し損なったヘリのパイロットだ。ラムゼイに叱られた上に報酬をもらい損ねたので、俺に逆恨みをして仕返しに来た。蹴飛ばしてやったら逆上して刃物を出して来たのだ。」
「そうか・・・あんたが無事で良かった。」

 ライサンダーは心底そう思った。自分の目の前でポールに何かあれば、父親は自分を許さないだろうと。
 それから、ハンバーガーの袋を思い出し、扉を開けると、既に袋は消えていた。

「あんたの昼飯が盗まれた。また買ってくる。」
「いい。」

ポールは楽な姿勢を取ろうと体を動かして位置を変えた。

「水だけもらえれば、蒸留水でなくても我慢する。」

 ライサンダーは思った。ドーマーと言うのは何と手がかかる生き物なのかと。