2016年9月10日土曜日

JJのメッセージ 4

  ごめんなさい

 ラムゼイと秘書のジェリーと言う男が部屋から出て行った後、JJがライサンダーに謝った。

わたしがかれらにたすけをもとめた。あなたをきけんのなかにいれてしまった。

「君のせいじゃないさ。」

 ライサンダーは腹が立っていた。JJにではなく、不甲斐なく負傷して気絶してしまった自分自身に。

 遺伝子管理局は、彼をフルネームで手配していた。だからラムゼイは少年が「はぐれドーマー」の子だと知ったのだ。ダリルが「死んだ」と嘘をついて守ろうとした子供だ。男同士の染色体を掛け合わせて創った、類い希な作品が、美しく元気な若者に育っていた。ラムゼイは嬉しいのだ。
 しかも、ベーリングの娘がライサンダーと行動を共にしていたのも嬉しい誤算だ。
ダリル・セイヤーズは、きっと砂漠で彼女を拾ったのだ。拾って、知らないふりをした。
嘘つきドーマーは結局昔の仲間に捕まって、生まれ故郷に送還された。実に惜しい話だ。
あのドーマーからは女の子が創れるのに・・・
ラムゼイが、ライサンダーを創る報酬にダリルから得た染色体は、使用人のコロニー人の女の卵子と受精してしっかりと女の赤ちゃんになった。素直に驚きだった。地球人の男から女の子は創れないと言うのが、今の世の常識だったのだ。女の子は全部で5人、中東の富豪の娘として高値で売れた。1箇の受精卵を分割した5つ子ではなく、5箇の受精卵の5人姉妹だ。
 ラムゼイは、ジェリーに言った。

「あのガキも使えると思うか?」
「どうでしょう・・・」

 秘書は首をかしげた。

「二親が男性ですからね。」
「だが、遺伝子管理局はあのガキを探しているぞ。」
「研究材料としては価値があるからじゃないですか?」
「研究材料か・・・」

ラムゼイはジェリーを横目で見た。

「ベーリングの娘は研究材料としては、どうかな?」
「遺伝子組み換え人間ですか? ドームなら、あの程度の技術はあるでしょう?」
「封印されているがな・・・何故ドームはあの娘を欲しがる? ベーリングは何故全滅覚悟であの娘を取り戻そうとしたのだ?」