2016年9月11日日曜日

JJのメッセージ 9

 ライサンダー・セイヤーズとJJがラムゼイ博士の隠れ家で「世話」になり始めてから2週間たった。
 ライサンダーはラムゼイ博士の腹心で秘書のジェリー・パーカーと行動を共にすることが多かった。パーカーは秘書であり遺伝子学者であり執事でもあり、運転手でもあり・・・何でも屋なのだが、あまり表に出ることはなかった。外での作業は部下たちに命じてやらせるだけで、自身は監督すらしない。それでもてきぱき仕事をこなしており、部下たちは彼を信頼しているらしく、逆らう者はいなかった。ライサンダーはパーカーに見張られていると言う事実を脇に置いて、彼から学ぶものは多いと思ったので、わからないことは質問したし、出来そうなことはやらせてもらった。
 ラムゼイ博士はJJに興味を持っていたが、彼女が彼を親の敵と見なしていることを承知していた。だから、当分は距離を置くことにして、彼女に用事がある時はライサンダーを通した。
 JJは、台所で働いていた。家事が下手なのにそこで働いたのは、女性がいたからだ。
コロニー人の女性でシェイと言う名の、既に50歳を越えていたが隠れ家で唯一人の女性だ。彼女は、博士の商売であるクローン製造の際に使用する卵子の提供者でもあったので、隠れ家の男達は彼女に手出しすることを固く禁じられていた。だから、シェイは隠れ家では威張っていた。シェイのそばにいればJJは安全だと博士もパーカーも考えたのだ。

 「あんたの彼氏は、博士に弟子入りしたの?」

 突然現れた2人の若者が捕虜でもなく客人でもない扱いをされていることに、シェイは戸惑っていた。しかも少女は口が利けない上に全く家政婦として使い物にならないほど無知だ。
 JJはパーカーからもらった会話用のタブレットに素早く言葉を打ち込んだ。

「博士の弟子ではなくて、秘書の弟子。」
「変なの・・・」

シェイは深く考えない人だ。ずっとラムゼイ博士の隠れ家で暮らしているので、外の世界を知らない。だから、あまり複雑なことは考えない。でも、ある事実は認識していた。

「ジェリーは、博士の息子同然なのよ。博士は組織外の人間がジェリーに近づくのを嫌がるわ。あんたの彼氏は特別なんだね。」

その夜、2人で一つの部屋を与えられているライサンダーとJJは夕食後にその日の出来事を報告し合った。いつもと変わらない、使用人生活だが、JJは久し振りに紙に図を描いた。DNAの塩基配列だ。いつも通り、ライサンダーにはよくわからない。

「これは誰?」

JJが図に名前を書いた。 ジェリー と。
それから、もう一つ描いた。 ラムゼイ と。それからタブレットに打ち込んだ。

親子ではない。でも、X染色体に共通点がある。

次の文章は、ライサンダーを仰天させた。

貴方とダリル父さんも同じ共通点がある。