2016年9月26日月曜日

トラック 10

 ライサンダーが運転席に戻ると、ジェリー・パーカーが時間をくったことについて苦情を言った。少年は無視した。エンジンをかけて、トラックを出すと、後続車が続いた。

 さっきの運転手は確かに父だった。髪はきちんとカットされてスーツに合わせた髪型だったが、あの淡い赤みがかったブロンドは父の髪の色だ。そしてあの声は絶対に忘れない。
 でも、どうして父がここにいるのだ? ドームは貴重な女の子を生める男を何故危険なメーカー狩りに出すのだ? それほどあのスキンヘッドは貴重な存在なのか?

 物思いにふけりながら運転していると、いきなり左側で大きな警笛が鳴った。
ハッと我に返ったライサンダーは、トラックの横を3台の乗用車が猛スピードで追い越すのを見た。危うく側面にぶつかるところだった。
 と思う内に、今度は背後からパトカーのサイレンが近づいて来た。ジェリーが窓から顔を出して後方を見た。

「どうする?」

ライサンダーが尋ねると、ジェリーは道路端に停めろ、と言った。

「それが世間の常識だ。」

 言われた通りにすると、後続の2台も停まった。4台のパトカーがサイレンを鳴らしながら横を通り過ぎた。先刻の3台の乗用車を追跡しているようだ。
何かあったのか? とライサンダーはラジオの周波数をいろいろ変えてみたが、どれも犯罪のニュースは流していなかった。
 再び退屈なドライブが始まった。ライサンダーはセント・アイブス・メディカル・カレッジ・タウンに到着したら、自分たちはどうなるのだろうと考えた。
そもそも目的地がどんな土地なのかも知らない。名前から判断すれば医科大なのか?
そんな所に父は何の用事があるのだ? ラムゼイ博士の隠れ家に行くのか?
 前方に車が数台停まっているのが見えた。パトカー4台に乗用車4台、ハイウェイを塞ぐ形で停まっている。しかも乗員は全員外にいるようだ。
 ライサンダーがジェリーに声を掛ける前に、ジェリーも気が付いた。

「封鎖だ。」
「突破する?」

 ライサンダーの威勢の良い提案に、ジェリーは乗らなかった。

「強硬手段に出てもこの図体ばかりでかいトラックでは逃げ切れない。」

 彼は停止を命じた。