2020年7月13日月曜日

蛇行する川 1   −13

 結局、鑑識班は一人が装備の番をするので保安官事務所に泊まり、後の3人はカリ警部補と共にホテルに宿泊することに決めた。フォイル刑事は翌朝の9時に事務所で再び合流することに決めて去って行った。
 遺伝子管理局のハイデッカーも静音ヘリでタンブルウィードの支局に帰った。明日は遺体を回収したら連絡をくれと言い残して。
 シマロンは鑑識班の車をシャッターが降りる車庫に案内し、ハーローが見張り番の人員の宿泊の準備をしたが、どうやら彼自身も付き合うつもりらしく、宿直用の部屋から毛布を運び出し、ソファに置いた。

「晩飯は皆さん一緒なんでしょ? 僕も良いですか?」

 ちょっと調子良くないか、とシマロンは苦笑したが、カリが「お2人も一緒にどう?」と言ったので、結局近くのダイナーへ行った。ホテルのレストランでは懐が寂しくなってしまうからだ。多分、今頃セッパー博士はケンウッド長官とボディガードのサルバトーレと共にレストランで優雅に食事しているのだろう、とシマロンは想像した。
 カリ警部補はあまり多く喋らない人で、鑑識チームの方が賑やかだった。ハーローは同年輩のメンバーと仲良くなって野球や釣りの話で盛り上がっていた。
  シマロンがビールを味わっていると、カリが囁きかけた。

「第1発見者はボートの客だったのね?」
「うん。3人、サンダーハウスから来ている客だ。」
「サンダーハウス?」

 カリが顔をしかめた。

「コロニー人なの?」
「2人の博士はコロニー人だ。それに地球人のボディガードが1人。」
「そう言う人達なら、話を聞いても何も出なさそうね。」
「全く出ないと思うよ。牛の舌の岸辺で土から出ている腕を見つけただけなんだ。」
「それは宇宙では絶対に体験出来ないでしょうね。」

 カリが笑った。シマロンはふと彼女はドームに行ったことがあるのだろうか、と考えた。

「警部補、お子さんは?」
「いないわ。私、独身だし、男の人と子供を作るような仲になったこともない。」
「それは・・・失礼しました。」

 すると彼女が横目で彼を見た。

「貴方も独身でしょ?」
「うん・・・このクリアクリークで適齢期の女性を見つけようと思えば苦労だからね。」

 シマロンは自嘲気味に言った。

「俺も養子なんだ。」
「この世の人口の3分の1は養子よ。」

 そしてカリは悩ましげな表情で彼女自身のビール瓶を見た。

「ずっと不思議なんだけど・・・養子になる子供達って、どこから来るの? 」

 シマロンは彼女の顔を見つめた。彼女が続けた。

「どうして誰もそれを疑問に思わないの?」