ケンウッド博士の質問の真意を正確に解したのはシマロン1人だけだったが、ハーローが「いません」と答えた。
「コロニーの人がわざわざこんな何もない土地に住み着く理由がないじゃないですか。」
「そうかね?」
ケンウッド博士はテラスの周囲を見回した。
「こんなに素晴らしい自然に囲まれた土地なのになぁ。」
シマロンはサルバトーレを見た。
「君の先祖はどこの部族だい?」
すると奇妙なほどにサルバトーレが狼狽えた。ええッと・・・と彼は困惑してケンウッド博士を見た。助けを求める目付きだ。博士が答えた。
「ダコタ族だったと思うよ。でも大異変のお陰で家系を辿るのが難しくなっている。」
「サルバトーレさんも養子なんでしょ?」
ハーローが無邪気に尋ね、サルバトーレは頷いた。ちょっとホッとした表情だ。シマロンは何に彼は動揺したのだろうと思ったが、大した問題ではないと断じた。
ケンウッド博士が時計を見た。
「そろそろサンダーハウスに戻ろうかな。シュリーに内緒で出てきてしまったので心配しているかも知れない。」
「大丈夫です、博士。僕が彼女に断ってきました。」
サルバトーレがそこのところは怠りなく対処してきたと態度に表して言った。博士が不安げに尋ねた。
「落し物のことを言ったのか?」
「いいえ、博士がクリアクリークの町を気に入られてまた出かけて行かれたと報告しただけです。彼女は早く追いかけろと僕に指示しました。遊びに行くのは構わないが、無断で出かけるなと仰っただけですよ。」
まるで配偶者のようだ、とシマロンはシュリー・セッパー博士のケンウッド博士に対する接し方をそう感じた。指輪を渡して会うたびに彼が持っているかチェックを入れる。彼の行動は大体お見通しで、祖父と孫ほどの年齢差があるにも関わらず彼を子供を見守る母親の様な目で見ている。
「それならもう少しゆっくりして行こうか。保安官も時間は大丈夫ですか?」
「住民から何か言ってこない限りは・・・」
ケンウッド博士は頷くとウェイターを呼んだ。そして勘定を頼んだので、シマロンはちょっと慌てた。博士は4人全員の勘定を依頼したのだ。
「博士に奢っていただく訳には・・・」
「いや、奢らせてくれないか。私の失敗で君達を振り回してしまったからね。」
「しかし・・・」
サルバトーレがシマロンの手を抑える仕草をした。博士の好きにさせてやってくれと目で要請してきた。シマロンは渋々引き下がった。
「わかりました。有り難くご馳走になります。」
「有り難うございます。」
ハーローもちゃっかり礼を述べた。恐らくこの4人の中では実際にケンウッド博士が一番の高給取りなのだ。ウェイターが精算機を持って来たので、博士はそれにカードをかざした。端末での支払いではなくカードだ。そう言えば遺伝子管理局の連中も支払いはカードを使っているな、とシマロンはぼんやりと思った。コロニーの経済がどんな方法でお金の遣り取りをしているのかわからないが、ドームではカードを使用するらしい。
支払いが終わると、博士はちょっと失礼と断って建物の中に入って行った。お手洗いに行ったのだろう。彼の姿が消えると、ハーローが
「良い人ですね。」
と同意を求める様に言った。サルバトーレが無言で大きく頷いた。シマロンはハーローがそう思うのはご飯を奢ってもらったからだとわかっていたが、その言葉を否定するつもりはなかった。
シマロンの端末に電話が掛かって来た。シマロンはサルバトーレに断って電話に出た。
「クリアクリーク保安官・・・」
「トニーか?」
と遺伝子管理局タンブルウィード支局長ジェラルド・ハイデッカーの声がした。
「フォイルから連絡はあったか?」
「ある訳ないだろう。あの男はタウンマーシャルなんかに事件の捜査進行状況なんか話さない。」
「そうか。では僕がDNA鑑定結果を教えてやるよ。君も関わったんだから知る権利はある。」
「遺体の身元が判明したのか?」
「否。」
シマロンは思わず、「はぁ?」と声を出した。
「鑑定に失敗したのか?」
「失敗なんかしない。」
ハイデッカーがムッとした。
「遺伝子管理データに登録されていない人間だと言うことだ。」
「それはどう言う・・・」
「違法クローンか、コロニー人だってことだ。」
シマロンの脳裡に昼前ケンウッド博士が森で拾ったPTPのゴミが浮かんだ。
「コロニーの人がわざわざこんな何もない土地に住み着く理由がないじゃないですか。」
「そうかね?」
ケンウッド博士はテラスの周囲を見回した。
「こんなに素晴らしい自然に囲まれた土地なのになぁ。」
シマロンはサルバトーレを見た。
「君の先祖はどこの部族だい?」
すると奇妙なほどにサルバトーレが狼狽えた。ええッと・・・と彼は困惑してケンウッド博士を見た。助けを求める目付きだ。博士が答えた。
「ダコタ族だったと思うよ。でも大異変のお陰で家系を辿るのが難しくなっている。」
「サルバトーレさんも養子なんでしょ?」
ハーローが無邪気に尋ね、サルバトーレは頷いた。ちょっとホッとした表情だ。シマロンは何に彼は動揺したのだろうと思ったが、大した問題ではないと断じた。
ケンウッド博士が時計を見た。
「そろそろサンダーハウスに戻ろうかな。シュリーに内緒で出てきてしまったので心配しているかも知れない。」
「大丈夫です、博士。僕が彼女に断ってきました。」
サルバトーレがそこのところは怠りなく対処してきたと態度に表して言った。博士が不安げに尋ねた。
「落し物のことを言ったのか?」
「いいえ、博士がクリアクリークの町を気に入られてまた出かけて行かれたと報告しただけです。彼女は早く追いかけろと僕に指示しました。遊びに行くのは構わないが、無断で出かけるなと仰っただけですよ。」
まるで配偶者のようだ、とシマロンはシュリー・セッパー博士のケンウッド博士に対する接し方をそう感じた。指輪を渡して会うたびに彼が持っているかチェックを入れる。彼の行動は大体お見通しで、祖父と孫ほどの年齢差があるにも関わらず彼を子供を見守る母親の様な目で見ている。
「それならもう少しゆっくりして行こうか。保安官も時間は大丈夫ですか?」
「住民から何か言ってこない限りは・・・」
ケンウッド博士は頷くとウェイターを呼んだ。そして勘定を頼んだので、シマロンはちょっと慌てた。博士は4人全員の勘定を依頼したのだ。
「博士に奢っていただく訳には・・・」
「いや、奢らせてくれないか。私の失敗で君達を振り回してしまったからね。」
「しかし・・・」
サルバトーレがシマロンの手を抑える仕草をした。博士の好きにさせてやってくれと目で要請してきた。シマロンは渋々引き下がった。
「わかりました。有り難くご馳走になります。」
「有り難うございます。」
ハーローもちゃっかり礼を述べた。恐らくこの4人の中では実際にケンウッド博士が一番の高給取りなのだ。ウェイターが精算機を持って来たので、博士はそれにカードをかざした。端末での支払いではなくカードだ。そう言えば遺伝子管理局の連中も支払いはカードを使っているな、とシマロンはぼんやりと思った。コロニーの経済がどんな方法でお金の遣り取りをしているのかわからないが、ドームではカードを使用するらしい。
支払いが終わると、博士はちょっと失礼と断って建物の中に入って行った。お手洗いに行ったのだろう。彼の姿が消えると、ハーローが
「良い人ですね。」
と同意を求める様に言った。サルバトーレが無言で大きく頷いた。シマロンはハーローがそう思うのはご飯を奢ってもらったからだとわかっていたが、その言葉を否定するつもりはなかった。
シマロンの端末に電話が掛かって来た。シマロンはサルバトーレに断って電話に出た。
「クリアクリーク保安官・・・」
「トニーか?」
と遺伝子管理局タンブルウィード支局長ジェラルド・ハイデッカーの声がした。
「フォイルから連絡はあったか?」
「ある訳ないだろう。あの男はタウンマーシャルなんかに事件の捜査進行状況なんか話さない。」
「そうか。では僕がDNA鑑定結果を教えてやるよ。君も関わったんだから知る権利はある。」
「遺体の身元が判明したのか?」
「否。」
シマロンは思わず、「はぁ?」と声を出した。
「鑑定に失敗したのか?」
「失敗なんかしない。」
ハイデッカーがムッとした。
「遺伝子管理データに登録されていない人間だと言うことだ。」
「それはどう言う・・・」
「違法クローンか、コロニー人だってことだ。」
シマロンの脳裡に昼前ケンウッド博士が森で拾ったPTPのゴミが浮かんだ。