「ザッカレイ、もしくは サンダースを確保しに行くのか?」
とハイデッカーがシマロンに尋ねた。
「なりすましの証拠はDNAを調べればすぐに出るが、殺人の証拠はないぞ。」
「わかっている。だが身柄を抑えておくことは出来る。」
「1人で行くな。」
ハイデッカーは上着を取った。
「マイケルと僕がそっちに到着する迄待っていろ。サンダースはまだ逃げないだろう。」
「彼が呑気者ならね・・・デンプシーを殺したのがアイツなら、こっちがのんびりしていられない。」
シマロンがそう言った時、外でサイレンが聞こえてきた。警察のものではない。シマロンは窓の外を見たが、サイレンが鳴っている方向は窓から見えなかった。
どうした?とハイデッカーが尋ねた。
「サイレンだ。火災かな。 見てくる。また後でな。」
シマロンは電話を切り、外へ出た。自警消防団が消防庫へ走って行く。シマロンはサイレンが聞こえる方角に黒い煙が上がっているのを見た。あの方角はローカッスルだ。彼はパトロールカーに乗り込んだ。
消防車とほとんど競争みたいな感じで道を走った。ローカッスルは近い。すぐに船着場前の駐車場に到着した。
サンダースの小さな家から煙が上がっていた。既に3台の消防車両が前に停まって消化剤を放射する準備に取り掛かっていた。駐車場には数台の車がいたが、どれもレストハウス前に駐められていて、ドライブの途中に休憩に立ち寄ったものと思われた。レストハウスの出入り口の前ではドライバー達が出てきて火災の様子を眺めている。
シマロンは車から降り、近くにいた消防団長に尋ねた。
「サンダースは?」
「船着場にはいない。家の中かも知れない。」
シマロンは家に近づこうとした。消防団長に腕を掴まれた。
「消火作業の邪魔だから、離れてて下さいよ、保安官。」
その時、家の玄関のドアを消防団員が突き破った。既に窓ガラスが割れていたので、バックドラフト現象は起きなかったが、それでも煙が外へ広がった。3名のマスクを装着した団員が中に飛び込んだ。
シマロンは離れていたが、熱を感じ、同時に微かに石油系の匂いも嗅いだ。
放火か?
小さな家だったし、消防団員達は日頃の訓練の賜物で、中から重要な物を素早く運び出してきた。真っ黒になった人の形をした物だ。
「担架を早く!」
「救急車だ!」
シマロンは思わずその運び出された人物に駆け寄った。救急車が駐車場に飛び込むように走り込んで来た。
「サンダース!」
シマロンは呼びかけ、救急隊員より先にその人物に近づいた。
「サンダース・・・え?」
黒い煤まみれになっていたが、消防団員達に抱えられたその人物の顔はベルナルド・サンダースとは違って見えた。もっと見知った顔だ。
「ジョン? まさか・・・君か、ジョン?!」
救急のストレッチャーの上に黒くなった人物が寝かされた。腕が動いていた。救急隊員が酸素マスクを顔に当てた。
「ジョン!」
叫ぶシマロンの肩に誰かが手を置いた。振り返ると、消防団長が立っていた。
「見た感じじゃ火傷はしてないと思う。だけど、煙を吸い込んじまってるから・・・」
幼馴染のジョン・ヴァンスに似た怪我人は救急車に乗せられた。救急救命士が処置を施すのを見ながら、シマロンは震える手で端末を出し、ヴァンスの自宅に電話を掛けた。
長い呼び出し音の後でヴァンスの妻が出た。
「エリー、トニーだ。」
シマロンは出来るだけ冷静さを装うと努力したが、声が震えそうだった。
「ジョンはいるか?」
「出かけているわ。」
「何処へ行った?」
「知らない。ホテルじゃないの? どうかした?」
救急車の側で声が上がった。
「呼吸が戻ったぞ!」
「すぐ病院へ運べ!」
シマロンはヴァンスの妻に病院の名を告げて、そこへ行ってくれと言った。
「ジョンが怪我をしたの?」
エリー・ヴァンスの声が緊張を帯びた。シマロンはサイレンを鳴らして走り出す救急車を見送りながら答えた。
「ジョンだとはまだ断定できないが、怪我をした人が運ばれた。行ってやってくれないか?」
通話を終えたシマロンは燃える家を見た。消化剤を浴びせられている家は小さいこともあって炎の勢いを落としつつあった。
あの怪我人がジョンだとして、何故彼はあの家に居たんだ? それにサンダースは?
シマロンは辺りを見回し、ヴァンスの乗用車を見つけ、それからサンダースのピックアップが駐車場のどこにも見当たらないことに気が付いた。
シマロンの脳裏にその日の昼前にホテルのカフェでヴァンスと交わした会話が蘇った。ヴァンスはサンダースが殺人犯だと言う推理をシマロンと一緒に考えたのだ。
アイツ、自分1人でそれを確かめに行ったってぇのか?
シマロンはパトロールカーに戻り、交通システムを立ち上げた。警察に登録されているサンダースの車の車番を入力して現在地を探した。
とハイデッカーがシマロンに尋ねた。
「なりすましの証拠はDNAを調べればすぐに出るが、殺人の証拠はないぞ。」
「わかっている。だが身柄を抑えておくことは出来る。」
「1人で行くな。」
ハイデッカーは上着を取った。
「マイケルと僕がそっちに到着する迄待っていろ。サンダースはまだ逃げないだろう。」
「彼が呑気者ならね・・・デンプシーを殺したのがアイツなら、こっちがのんびりしていられない。」
シマロンがそう言った時、外でサイレンが聞こえてきた。警察のものではない。シマロンは窓の外を見たが、サイレンが鳴っている方向は窓から見えなかった。
どうした?とハイデッカーが尋ねた。
「サイレンだ。火災かな。 見てくる。また後でな。」
シマロンは電話を切り、外へ出た。自警消防団が消防庫へ走って行く。シマロンはサイレンが聞こえる方角に黒い煙が上がっているのを見た。あの方角はローカッスルだ。彼はパトロールカーに乗り込んだ。
消防車とほとんど競争みたいな感じで道を走った。ローカッスルは近い。すぐに船着場前の駐車場に到着した。
サンダースの小さな家から煙が上がっていた。既に3台の消防車両が前に停まって消化剤を放射する準備に取り掛かっていた。駐車場には数台の車がいたが、どれもレストハウス前に駐められていて、ドライブの途中に休憩に立ち寄ったものと思われた。レストハウスの出入り口の前ではドライバー達が出てきて火災の様子を眺めている。
シマロンは車から降り、近くにいた消防団長に尋ねた。
「サンダースは?」
「船着場にはいない。家の中かも知れない。」
シマロンは家に近づこうとした。消防団長に腕を掴まれた。
「消火作業の邪魔だから、離れてて下さいよ、保安官。」
その時、家の玄関のドアを消防団員が突き破った。既に窓ガラスが割れていたので、バックドラフト現象は起きなかったが、それでも煙が外へ広がった。3名のマスクを装着した団員が中に飛び込んだ。
シマロンは離れていたが、熱を感じ、同時に微かに石油系の匂いも嗅いだ。
放火か?
小さな家だったし、消防団員達は日頃の訓練の賜物で、中から重要な物を素早く運び出してきた。真っ黒になった人の形をした物だ。
「担架を早く!」
「救急車だ!」
シマロンは思わずその運び出された人物に駆け寄った。救急車が駐車場に飛び込むように走り込んで来た。
「サンダース!」
シマロンは呼びかけ、救急隊員より先にその人物に近づいた。
「サンダース・・・え?」
黒い煤まみれになっていたが、消防団員達に抱えられたその人物の顔はベルナルド・サンダースとは違って見えた。もっと見知った顔だ。
「ジョン? まさか・・・君か、ジョン?!」
救急のストレッチャーの上に黒くなった人物が寝かされた。腕が動いていた。救急隊員が酸素マスクを顔に当てた。
「ジョン!」
叫ぶシマロンの肩に誰かが手を置いた。振り返ると、消防団長が立っていた。
「見た感じじゃ火傷はしてないと思う。だけど、煙を吸い込んじまってるから・・・」
幼馴染のジョン・ヴァンスに似た怪我人は救急車に乗せられた。救急救命士が処置を施すのを見ながら、シマロンは震える手で端末を出し、ヴァンスの自宅に電話を掛けた。
長い呼び出し音の後でヴァンスの妻が出た。
「エリー、トニーだ。」
シマロンは出来るだけ冷静さを装うと努力したが、声が震えそうだった。
「ジョンはいるか?」
「出かけているわ。」
「何処へ行った?」
「知らない。ホテルじゃないの? どうかした?」
救急車の側で声が上がった。
「呼吸が戻ったぞ!」
「すぐ病院へ運べ!」
シマロンはヴァンスの妻に病院の名を告げて、そこへ行ってくれと言った。
「ジョンが怪我をしたの?」
エリー・ヴァンスの声が緊張を帯びた。シマロンはサイレンを鳴らして走り出す救急車を見送りながら答えた。
「ジョンだとはまだ断定できないが、怪我をした人が運ばれた。行ってやってくれないか?」
通話を終えたシマロンは燃える家を見た。消化剤を浴びせられている家は小さいこともあって炎の勢いを落としつつあった。
あの怪我人がジョンだとして、何故彼はあの家に居たんだ? それにサンダースは?
シマロンは辺りを見回し、ヴァンスの乗用車を見つけ、それからサンダースのピックアップが駐車場のどこにも見当たらないことに気が付いた。
シマロンの脳裏にその日の昼前にホテルのカフェでヴァンスと交わした会話が蘇った。ヴァンスはサンダースが殺人犯だと言う推理をシマロンと一緒に考えたのだ。
アイツ、自分1人でそれを確かめに行ったってぇのか?
シマロンはパトロールカーに戻り、交通システムを立ち上げた。警察に登録されているサンダースの車の車番を入力して現在地を探した。