カリ警部補の「養子になる子供はどこから来るのか」と言う疑問は、きっとケンウッド博士が答えを知っているだろうとシマロンは思った。しかしあの博士の本当の身分は警察関係者と雖も黙っていなければならない。博士自身が打ち明ける気分になるまでは。
シマロンはダイナーを出ると自宅へ帰った。小さな戸建の古い家だが、住み心地は良い。シマロンは父親が若い頃に買ったこの家が気に入っていた。父親もここで一生を終えたいのだろうが、現在は介護施設に入居している。頭はしっかりしているのだが、右半身が不自由になってしまい、シマロン一人で世話をする時間が取れないので、父親自らが決めて入所したのだ。シマロンは月に3日、父親を連れ帰り、休日を2人でのんびり過ごすのが楽しみだった。
川で遺体が出たと言ったら、父親はどんな感想を言うだろうか。事故だと言うか、事件だと言うか。平和な田舎町のちょっと退屈しのぎの騒ぎだと言うか。
使い慣れた部屋のベッドで眠り、翌朝はいつもの様に6時に目覚めた。
綺麗な晴れた朝の空を窓越しに見て、シマロンはふと思った。
今朝はホテルのカフェで朝食と行こう!
モッキングバードのカフェは釣りのシーズンは夜が明ける前から開いている。シーズンオフの今でも客が希望すれば早く開くのだ。忙しいホテルではないので従業員の時間調整が結構自由で、早く開ければ早く昼前の休憩に入るのだ。多分、カリ警部補は早めに朝ごはんにするだろうと予想して、シマロンは着替えるとすぐにホテルに向かって出かけた。
ホテル前の広い駐車場には車が5台ほど停まっていた。1台は郡警察の人々に貸した保安官事務所のバンだ。昨夜は飲んだので、彼等は先にバンでホテルに行って部屋を取り、荷物を置いてダイナーへ歩いて行った。戻ったのも徒歩だ。シマロンは自分の車をバンの横に停めて、エントランスに向かった。
入り口の左手のホテルの庭に面してカフェがある。テラスに出されたテーブルで女性が一人朝食を取っているのが見えた。あの人影はセッパー博士だ。
シマロンはカフェに向かって方向転換した。日除けテントの下で、セッパー博士がテーブルの上に置いたタブレットを覗きながらパンをちぎって口に運んでいた。
「ちょっとスリリングな展開になると思うけど、きっとニコは私が首を突っ込むのは駄目って言うに決まってるわ。」
と彼女はタブレットに向かって言うとコロコロ笑った。タブレットで誰かが喋り、彼女はそれに対して、
「大丈夫、彼の言うことは聞くから。それじゃまたね! バイバイ!」
と言って通信を終えた。
シマロンは声をかけた。
「おはようございます、セッパー博士。」
セッパー博士が顔を上げ、彼を見た。
「あら保安官、おはようございます!」
シマロンは彼女の連れを探すふりをして周囲に目をやった。彼女が笑顔で言った。
「男性2人は森へ散歩に行ってます。あの人達は朝の森が珍しいのよ。」
シマロンは彼女を振り返った。まだ高校生の様なあどけなさが残る女性だ。だが目の光は大人っぽい。
「貴女は珍しくないのですか?」
「私はサンダーハウスで毎日見ているから。」
「ああ・・・」
やはりセッパー博士はサンダーハウスで働く研究者でケンウッド博士はドームから来た客なのだ。サルバトーレも都会育ちなのだろう。
セッパー博士が向かいの席を指した。
「お掛けになれば? 朝ごはんはお済み?」
「いや、これからです。ご一緒して良いですか?」
「ええ、どうぞ。」
彼女は屋内を指差した。
「でもセルフサービスよ。」
「知ってますよ。」
シマロンは微笑んで食べ物を取りに建物に入った。
シマロンはダイナーを出ると自宅へ帰った。小さな戸建の古い家だが、住み心地は良い。シマロンは父親が若い頃に買ったこの家が気に入っていた。父親もここで一生を終えたいのだろうが、現在は介護施設に入居している。頭はしっかりしているのだが、右半身が不自由になってしまい、シマロン一人で世話をする時間が取れないので、父親自らが決めて入所したのだ。シマロンは月に3日、父親を連れ帰り、休日を2人でのんびり過ごすのが楽しみだった。
川で遺体が出たと言ったら、父親はどんな感想を言うだろうか。事故だと言うか、事件だと言うか。平和な田舎町のちょっと退屈しのぎの騒ぎだと言うか。
使い慣れた部屋のベッドで眠り、翌朝はいつもの様に6時に目覚めた。
綺麗な晴れた朝の空を窓越しに見て、シマロンはふと思った。
今朝はホテルのカフェで朝食と行こう!
モッキングバードのカフェは釣りのシーズンは夜が明ける前から開いている。シーズンオフの今でも客が希望すれば早く開くのだ。忙しいホテルではないので従業員の時間調整が結構自由で、早く開ければ早く昼前の休憩に入るのだ。多分、カリ警部補は早めに朝ごはんにするだろうと予想して、シマロンは着替えるとすぐにホテルに向かって出かけた。
ホテル前の広い駐車場には車が5台ほど停まっていた。1台は郡警察の人々に貸した保安官事務所のバンだ。昨夜は飲んだので、彼等は先にバンでホテルに行って部屋を取り、荷物を置いてダイナーへ歩いて行った。戻ったのも徒歩だ。シマロンは自分の車をバンの横に停めて、エントランスに向かった。
入り口の左手のホテルの庭に面してカフェがある。テラスに出されたテーブルで女性が一人朝食を取っているのが見えた。あの人影はセッパー博士だ。
シマロンはカフェに向かって方向転換した。日除けテントの下で、セッパー博士がテーブルの上に置いたタブレットを覗きながらパンをちぎって口に運んでいた。
「ちょっとスリリングな展開になると思うけど、きっとニコは私が首を突っ込むのは駄目って言うに決まってるわ。」
と彼女はタブレットに向かって言うとコロコロ笑った。タブレットで誰かが喋り、彼女はそれに対して、
「大丈夫、彼の言うことは聞くから。それじゃまたね! バイバイ!」
と言って通信を終えた。
シマロンは声をかけた。
「おはようございます、セッパー博士。」
セッパー博士が顔を上げ、彼を見た。
「あら保安官、おはようございます!」
シマロンは彼女の連れを探すふりをして周囲に目をやった。彼女が笑顔で言った。
「男性2人は森へ散歩に行ってます。あの人達は朝の森が珍しいのよ。」
シマロンは彼女を振り返った。まだ高校生の様なあどけなさが残る女性だ。だが目の光は大人っぽい。
「貴女は珍しくないのですか?」
「私はサンダーハウスで毎日見ているから。」
「ああ・・・」
やはりセッパー博士はサンダーハウスで働く研究者でケンウッド博士はドームから来た客なのだ。サルバトーレも都会育ちなのだろう。
セッパー博士が向かいの席を指した。
「お掛けになれば? 朝ごはんはお済み?」
「いや、これからです。ご一緒して良いですか?」
「ええ、どうぞ。」
彼女は屋内を指差した。
「でもセルフサービスよ。」
「知ってますよ。」
シマロンは微笑んで食べ物を取りに建物に入った。