2018年1月2日火曜日

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 ドーム維持班が防寒着を作業着の上に着て外へ出かけた。太陽光発電の蓄電施設周辺のケーブルを調べているのがドームの壁越しに見えた。ドーマーもコロニー人も滅多に壁に近づかないのだが、この日は大勢が壁に近づいて外を眺めていた。停電しているので仕事が中断しているせいもあった。図書館は使えないし、ジムも闘技場も球技場もシャワーが使えないのでは使用する気分になれない。非常用電源は全て出産管理区とクローン製造施設、医療区を優先して使っている。
 維持班総代ロビン・コスビー・ドーマーがケンウッド長官の端末に電話を掛けてきた。

「主ケーブルが人工衛星の破片で切断されています。補助ケーブルで電流を通しますが、ドーム全体を賄うのはちょっと無理があります。」
「宇宙から資材を取り寄せよう。大至急必要な物をリストアップしてくれ。」
「了解しました。」
「最低限、どの程度の範囲で電気を使用できるのかな?」
「それもリストアップします。現在は厨房、ドアの開閉、通信機能のみですが、節約すれば範囲は広げられるでしょう。」

 ケンウッドは時計を見た。夕方の5時、もう外は夜の帳が降りかけていた。今夜は寒さに耐えなければならない。ガブリエル・ブラコフ副長官が食堂にドーマー達を集めていた。厨房は食事の支度があるので電気が通っている。薄暗いが照明が灯っていた。わいわいガヤガヤと喋っていたドーマー達は、配膳カウンター横に副長官が立つと静かになった。

「ドーマー諸君、それに執政官を始めとするコロニー人諸君。」

とブラコフは説明会を開始した。彼は事故の被害状況を説明し、今夜の復旧は無理であること、今夜使用可能な電力量を説明して節電協力を求めた。

「復旧にはどの程度時間が掛かりますか?」

 誰もが気にしていることだ。ブラコフは正直に答えた。

「現在維持班が必要な資材をリストアップする作業に入っている。それが出来たら、直ちに月の本部に発注する。急がせるから、どうか工事が終わるまで辛抱して欲しい。前代未聞の事故に我々も困っているが、出産管理区とクローン製造施設には被害が出ていないのは不幸中の幸いだ。ドームの外のシティにも被害が出ているそうなので、我々は我々だけでこの災難を乗り切ろう。」
「シティへの援助は?」
「それは地球政府が行う。役割分担はきちんとする。こちらの問題が先に解決出来れば、シティの援助も出来るはずだ。
 今夜は外気温がかなり低下している。君達のアパートの暖房は上限を決めておくが、止めることはしない。だが『外』は普段通りにはいかないので、防寒対策を各自お願いする。体調を崩さないように、夜間は出来るだけアパートに居ること。
 大丈夫、1週間はかからないはずだ。君達なら乗り越えられる。」