2018年1月14日日曜日

購入者 4 - 6

 客がゲイトを出てシャトルに乗り込み、宇宙へ去って行った。
 ケンウッド長官とブラコフ副長官はやっと肩の荷が下りた思いで、回廊を歩き出した。

「なんとか彼女達とハイネを会わせずに済んだな。」
「そうですね。まさかテロリストと防衛軍が戦っていたなんて知りませんでしたよ。もしドーマー達と彼女達を接触させていたら、地球人に宇宙の恥を知らせてしまうことになっていましたね。」
「ああ・・・だからハナオカ委員長はハイネと彼女達を接触させるなと念を押したのだなぁ・・・」
「せめてサインだけもらって送ってあげましょうか?」
「止せ、そんなことをしたら、これからも同様のサービスをしなきゃならん。」

 それから2人は師匠と弟子らしく研究の話をしながら歩き、長い回廊を時間をかけて抜け出した。中央研究所の近く迄来ると、4人の白髪の男達がやって来るのが見えた。ローガン・ハイネ・ドーマー、エイブラハム・ワッツ・ドーマー、ジョージ・マイルズ・ドーマーにグレゴリー・ペルラ・ドーマーだ。足腰が達者なハイネとペルラが車椅子のマイルズと杖のワッツを守るように寄り添っていた。
 ケンウッドは足を止めて4人が来るのを待った。ブラコフは「お先に」と挨拶して、ドーマー達に手を振って建物に入って行った。

「4人お揃いとは珍しい。」

 ケンウッドは久しぶりに会う元司厨長に声を掛けた。

「やぁ、司厨長、元気そうで何よりだ。」
「こんにちは、長官。貴方もお元気そうですな。」

 ペルラ・ドーマーが「黄昏の家」から3人が揃って出てきた理由を教えてくれた。

「ジャン=カルロスが、局長のところへ遊びに顔を出せと電話してきたのです。」
「丁度菓子が焼けたところだったので、タイミングが良かったですよ。」
「ロッシーニが?」

 ケンウッドは、秘書がボスを客の目から隠す目的で白髪頭の長老達を呼んだのだと気が付いた。
 なんだか可笑しく思えた。すると、ワッツが何かを思い出した。

「そう言えば、今日は外から通販の荷物が大量に入ってきたとコスビーが言ってましたな。なんでも、コートとマフラーを買った者が多かったとか・・・」
「ああ・・・」

 ペルラ・ドーマーが笑った。

「ジェレミーが言ってました、局長のコート姿がカッコ良かったので、真似したがるドーマー達がこぞって通販で購入したそうですよ。」