2018年1月14日日曜日

購入者 4 - 2

 保安課への連絡をブラコフ副長官に任せてケンウッドは中央研究所の長官執務室に戻った。秘書席でロッシーニ・ドーマーが仕事をしていた。長官が戻って来たので、彼は立ち上がった。

「長官、ちょっとよろしいですか?」
「うん?」

 ケンウッドは秘書机の前で立ち止まった。ロッシーニはケンウッドと同世代だが、地球人なので少し老けて見える。しかし同じ世代のドームの外で暮らしている一般の地球人から見ればずっと若い。
 ロッシーニは躊躇わずに言った。

「今日の客に監視をつけました。」

 ケンウッドは思わず彼を見た。

「何故だね?」

 ロッシーニが無表情に彼を見返した。

「違和感を感じたからです。」

 ケンウッドは暫く黙ってドーマーの秘書を見つめた。彼が感じたことをロッシーニも感じたと言うのか? ケンウッドが何も言わないので、ロッシーニは付け加えた。

「出産管理区に興味を示さない女性は珍しいと思いましたので・・・」

 ケンウッドは頷いた。そして尋ねた。

「監視は内務捜査班か?」
「はい。さりげなく周囲に配置させました。保安課が動かなかったので・・・」
「保安課にブラコフが電話を入れた。私達も奇妙だと思ったのだ。取り越し苦労であると良いが・・・」
「武器は持っていないはずです。ドーム入場の際に徹底的にゲイトで消毒と検査を受けますから。」
「うん。だが、この違和感の原因は何だろうね? 彼女達はただのお遣いだ。そうでないなら、目的は何だ? と言う疑問が残る。」