2018年1月5日金曜日

購入者 2 - 4

 お昼過ぎに北米北部班の第5チームが帰還した。消毒が終わるのももどかしく、ポール・レイン・ドーマーとクロエル・ドーマーは仲間に「お先に」と言い残して本部に向かって駆け出した。近道をしようと出産管理区スタッフ通路に駆け込んだところで保安課に捕まった。

「通路を走るな!」

 叱られている間に、仲間に追い越された。出産管理区は暖房が効いており、暖かいのだが、レインもクロエルも寒くて仕方がなかった。カナダの荒野で危うく遭難仕掛けて低体温症に陥る寸前まで行ったのだ。さっさと報告書をまとめて運動施設のサウナに入りたかった。
 ブルブル震えながらお説教を聞かされ、やっと解放されて足早に去ろうとした2人に保安課員が何気に言った。

「今日は居住区の停電で運動施設は使用出来ないからな。」
「サウナは?」
「使えない。」
「ジャグジーは?」
「そろそろ水になっているだろう。」

 歩きながら、クロエルが尋ねた。

「なんで停電?」
「俺に聞くな。」

 落胆していたので、普段から無愛想なレインがさらに冷たく答えた。
 医療区も暖かったので、建物の外に出た途端に彼等は気温低下を実感した。カナダよりは遥かにましだが、それでも普段と違うことはすぐにわかった。照明も点いていないし、空はまだ曇っていて肌寒い。見かけるドーマー達は皆一様に厚着していた。滅多に見かけないジャンパーやコートを着ていた。

「非常事態見たいっすね?」
「・・・」

 2人は遺伝子管理局本部に入った。受付の職員もジャンパー姿だ。帰還の手続きをして、クロエルは受付に尋ねた。

「停電の原因は何?」
「人工衛星の落下。」
「はぁ?」
「破片だ。廃棄衛星のゴミが落ちて、うちの送電線とシティの南西部を破壊したんだ。」
「シティを?」

 これにはレインも反応した。

「被害状況は?」
「火災と停電発生だったけど、もう収まったらしい。ドームからの援助は不要だったとかで、こちらはこちらの停電対策で必死だよ。」