2018年1月14日日曜日

購入者 4 - 5

 宇宙開拓事業団の2人の職員は結局無断で散歩に出たにも関わらず、目的の人物に会えぬまま、帰る時間を迎えた。ケンウッドとブラコフは2人の高温多湿に強い頑健な体のドーマーの子種が入ったケースを彼女達に手渡した。グラッデンとバルトマンはそれぞれ受け取りに署名をして、送迎フロアへ向かった。

「今回の落下騒ぎは災難でしたわね。」

とグラッデンが言った。

「地球周回軌道防衛隊はテロリストの戦闘機を撃墜して通信衛星が破壊されるのを防ぎましたけど、地球に残骸が落ちて被害を出したことに関して、連邦議会で追求されるようですわ。」

 ケンウッドとブラコフは驚いた。

「テロリスト、と仰いましたか?」

 あらっとグラッデンとバルトマンは互いの顔を見合わせた。まさか地球の人々に今回の事件が知らされていなかったとは、知らなかったようだ。

「ご存知ありませんでしたの? 太陽系人類戦線と名乗る過激派が宇宙開拓に反対して破壊活動を企みましたのよ。」
「木星と海王星のコロニー数カ所で爆破事件などを起こして多数の犠牲者を出したので、軍が掃討作戦を行ったのです。そして最後のグループが地球に逃げ込もうとしたので、周回軌道防衛隊が迎撃しました。」
「それで破片が地球に落ちたのですか・・・ゴミでも無人戦闘機の暴走でもなく?」
「ええ・・・きっと地球の皆さんに心配をかけないように、嘘の説明をしたのですね。」

 ケンウッドとブラコフは顔を見合わせた。地球人類復活委員会は知っていたはずだ。だが真実を教えてくれなかった。まるで地球人に故意に宇宙の情報を教えないのと同じだ。ドームで働くコロニー人にも宇宙で起きた事件を教えてくれないなんて・・・。
 ケンウッドは客に言った。

「防衛軍が地球をしっかり守ってくれさえすれば、私達は何も知らなくても構いません。どうせ2週間遅れで情報が届きますからね。」

 グラッデンが苦笑した。

「わざと貴方方に情報をセイブしている訳ではないと思います。貴方方が事件を知れば、地球人にも伝わってしまうと危惧しているのでしょう。地球は再生の途中です。宇宙空間での争いとは無縁でいてもらいたいのです。」
「貴女方の事業団もテロの標的にされているのですね?」
「ええ・・・重役には護衛がついています。私達はただの職員ですから、却って目立たないと言う理由で今回の大役を仰せつかりました。」

 バルトマンががっかりした表情を作って言った。

「ローガン・ハイネのサインをもらえるかと期待したのですが、出会えませんでしたわ。」