執政官会議は亡くなった3名の研究者に黙祷を捧げることから始まった。その後、長官のコロニー人秘書ヴァンサン・ヴェルティエンが、犠牲者の遺体を月へ送るのでお別れをしたい人は午後3時に宇宙港へ集合すること、と告げた。ドームは地球人の誕生の場所なので、葬儀は行わない。それに宇宙の故郷で犠牲者を待つ家族がいるのだ。愛する人々の下に帰してあげるのだ。
亡くなったハン・ジュアン博士も2名の助手達も人当たりの良い人達だったので、その死を悲しむ者は多かったし、突然の悲劇に怒りを覚える者も少なくなかった。保安課長アーノルド・ベックマンは、まだテロと断定した訳ではない、と前置きしてから、研究者達に捜査が終わる迄薬品の取り扱いを極力控えて欲しいと言った。
「これから薬剤管理室が現場から薬品の残留物を採取して、爆発物の正体を確認する作業に入る。また調合過程と使用した薬品の分析も行う。ハン博士は新薬の開発をしたそうだが、爆発する様な薬品を使ったとは思えない。何故新薬が爆発したのか、成分の方から調査する。」
ベックマンの説明に、執政官の中から質問が上がった。
「薬品が爆発したと、何故わかるのです? 爆弾ではないのですか?」
ベックマンはヤマザキを見た。ヤマザキは保安上あまり話を広めたくなかったので、ハイネが目を覚ましたことをベックマンに黙っていて欲しかった。
ベックマンが質問に答えた。
「犠牲者及び負傷者の傷を見て、また現場を検証した限り、爆発したのは薬品が入っていたフラスコ以外なかったのだ。」
「では、爆発はハン博士のミスですか?」
「それは検証しなければわからない。」
「実験に使用する薬剤は、実験施行者がレシピを薬剤管理室に提出し、薬剤管理室が計量、調合して実験室に運ぶのです。爆発物を薬剤管理室が調合するとは思えないし、また誤って作ってしまったとしても、薬剤師達は色や匂いが異なると気がつくでしょう。」
「ハン博士か助手が実験段階で何かの薬剤を追加したのでは?」
「生化学実験で爆発する様な薬剤を使うか?」
執政官達の声を聞いていたヤマザキは、ハイネが爆発直前に危険を察知したことを思い出した。多分、色か匂いが予想と違ったので、彼は異変に気づいたのだ。しかし逃げる暇も仲間を避難させることも出来なかった。彼自身が実験台に背を向けるだけで精一杯だったのだ。
ハイネは背中で飛散した薬品とガラス片を受け止めた。2名の女性薬剤師は殆ど薬品もガラス片も浴びていなかった。
ハイネは女性達を自分の体で庇ったんだ!
衝撃で3人一緒に倒れ、エヴァンズはその時に後頭部を床で強打してしまった。セシリアも後頭部を打ったが、彼女は軽かった。だからその後でハイネを襲うことが出来た。
だが、何故ドーマーがドーマーを刺さなきゃならん?
議場内が騒がしくなってきたので、ヴェルティエンが卓上チャイムを鳴らして執政官達を黙らせた。
「さっき長官執務室のロッシーニ・ドーマーから連絡が来ました。ケンウッド長官が昼頃に帰還されます。」
執政官達から安堵の溜息が聞こえた。やはりリーダーがいなければみんな不安なのだ。
ヴェルティエンは会議をまとめようと努力した。
「ご遺体の輸送は先刻お伝えした通りに行います。博士方は薬品に十分に注意を払って研究にお戻り下さい。それからご承知のことと思いますが、アフリカ・ドームのテロ事件と今回の事故又は事件についてドーマー達には話さないよう願います。研究所内のドーマー達は口が固いですが、コロニー人の中には口の軽い方もいらっしゃいますので・・・」
亡くなったハン・ジュアン博士も2名の助手達も人当たりの良い人達だったので、その死を悲しむ者は多かったし、突然の悲劇に怒りを覚える者も少なくなかった。保安課長アーノルド・ベックマンは、まだテロと断定した訳ではない、と前置きしてから、研究者達に捜査が終わる迄薬品の取り扱いを極力控えて欲しいと言った。
「これから薬剤管理室が現場から薬品の残留物を採取して、爆発物の正体を確認する作業に入る。また調合過程と使用した薬品の分析も行う。ハン博士は新薬の開発をしたそうだが、爆発する様な薬品を使ったとは思えない。何故新薬が爆発したのか、成分の方から調査する。」
ベックマンの説明に、執政官の中から質問が上がった。
「薬品が爆発したと、何故わかるのです? 爆弾ではないのですか?」
ベックマンはヤマザキを見た。ヤマザキは保安上あまり話を広めたくなかったので、ハイネが目を覚ましたことをベックマンに黙っていて欲しかった。
ベックマンが質問に答えた。
「犠牲者及び負傷者の傷を見て、また現場を検証した限り、爆発したのは薬品が入っていたフラスコ以外なかったのだ。」
「では、爆発はハン博士のミスですか?」
「それは検証しなければわからない。」
「実験に使用する薬剤は、実験施行者がレシピを薬剤管理室に提出し、薬剤管理室が計量、調合して実験室に運ぶのです。爆発物を薬剤管理室が調合するとは思えないし、また誤って作ってしまったとしても、薬剤師達は色や匂いが異なると気がつくでしょう。」
「ハン博士か助手が実験段階で何かの薬剤を追加したのでは?」
「生化学実験で爆発する様な薬剤を使うか?」
執政官達の声を聞いていたヤマザキは、ハイネが爆発直前に危険を察知したことを思い出した。多分、色か匂いが予想と違ったので、彼は異変に気づいたのだ。しかし逃げる暇も仲間を避難させることも出来なかった。彼自身が実験台に背を向けるだけで精一杯だったのだ。
ハイネは背中で飛散した薬品とガラス片を受け止めた。2名の女性薬剤師は殆ど薬品もガラス片も浴びていなかった。
ハイネは女性達を自分の体で庇ったんだ!
衝撃で3人一緒に倒れ、エヴァンズはその時に後頭部を床で強打してしまった。セシリアも後頭部を打ったが、彼女は軽かった。だからその後でハイネを襲うことが出来た。
だが、何故ドーマーがドーマーを刺さなきゃならん?
議場内が騒がしくなってきたので、ヴェルティエンが卓上チャイムを鳴らして執政官達を黙らせた。
「さっき長官執務室のロッシーニ・ドーマーから連絡が来ました。ケンウッド長官が昼頃に帰還されます。」
執政官達から安堵の溜息が聞こえた。やはりリーダーがいなければみんな不安なのだ。
ヴェルティエンは会議をまとめようと努力した。
「ご遺体の輸送は先刻お伝えした通りに行います。博士方は薬品に十分に注意を払って研究にお戻り下さい。それからご承知のことと思いますが、アフリカ・ドームのテロ事件と今回の事故又は事件についてドーマー達には話さないよう願います。研究所内のドーマー達は口が固いですが、コロニー人の中には口の軽い方もいらっしゃいますので・・・」