ローガン・ハイネ・ドーマーは午前の回診の頃には再び眠りに就いていた。ヤマザキ・ケンタロウは患者が眠ていてくれた方が安心出来た。この患者は気力が半端なく強いので、覚醒していると動こうとする。ベッドの上で手足を動かす程度なら良いが、仕事をしようとするのだから、目が離せない。警護の保安課員に絶対に端末をハイネに貸すなと言い聞かせておいた。
ガブリエル・ブラコフは当然ながらまだ意識が戻らない。顔を失ってしまったので、目覚めない方が本人の為だ。ヤマザキはカルテを眺め、彼の顔のどの部分から再生治療を始めようかと考えた。ガラス片で受けた筋肉の傷が治ればすぐに皮膚を再生してやろう。失った眼球の代替品も既に発注している。視神経が残っていたのは不幸中の幸いだ。唇は本人の希望を聞いた方が良いだろうか? 本来の唇をブラコフは「好きじゃないです」と言っていた。ハイネみたいにちょっと薄めの方が良いのだそうだ。耳も形良く作ってやろう。
だから・・・
「なぁ、ガブリエル、必ずこっちへ戻って来いよ。」
ヤマザキは滅菌テントの中のブラコフに話しかけた。無菌のドームと言っても、皮膚を失った重症患者に普通の人間が呼吸している空気は害がある。ブラコフは厳重に守られていた。
ハイネが女2人を庇ったのだとしたら、ブラコフは彼等から少し離れていたのだろう。もしハイネが彼を庇っていたら、女性2人はこの若者みたいな状況に陥ったはずだ。女性が顔を失うのは耐えられないことだ。男だって苦しいのに。
出産管理区に預けている女性2人の回診結果がヤマザキの端末に送られて来た。アイダ・サヤカは忠実に働く人だ。セシリア・ドーマーがハイネを刺したと聞いているので、彼女に麻酔を与えて当面眠らせておく、と連絡してきた。セシリアは鼻骨骨折が一番大きな怪我なので、目が覚めれば動ける。覚醒状態にしておくのは危険だった。
エヴァンズはまだ昏睡状態が続いていた。脳内の出血は止まったので、彼女の意識が戻るのを待つだけだ。本来なら親族を呼んで、彼女に語りかけてもらえれば覚醒のきっかけを作れるのだが、地球にいてはそうもいかない。民間人が地球に来るにはややこしい手続きが必要だし、今は地球周回軌道防衛隊が航路を封鎖している。
外来に行くと、前日生化学フロアで爆発で生じたガスを吸い込んでしまった人々が再診を受けに来ていた。喉の火傷の経過をチェックし、肺の状態を改て検査したりしていると、すぐにお昼になった。
食欲がなくても規則正しい時刻に食べることにしているヤマザキは中央研究所の食堂へ足を運ぶつもりでロビーに行った。するとケンウッド長官が慌ただしく駆け込んで来た。後ろにヤマザキが見知らぬ中年の女性がいた。
ガブリエル・ブラコフは当然ながらまだ意識が戻らない。顔を失ってしまったので、目覚めない方が本人の為だ。ヤマザキはカルテを眺め、彼の顔のどの部分から再生治療を始めようかと考えた。ガラス片で受けた筋肉の傷が治ればすぐに皮膚を再生してやろう。失った眼球の代替品も既に発注している。視神経が残っていたのは不幸中の幸いだ。唇は本人の希望を聞いた方が良いだろうか? 本来の唇をブラコフは「好きじゃないです」と言っていた。ハイネみたいにちょっと薄めの方が良いのだそうだ。耳も形良く作ってやろう。
だから・・・
「なぁ、ガブリエル、必ずこっちへ戻って来いよ。」
ヤマザキは滅菌テントの中のブラコフに話しかけた。無菌のドームと言っても、皮膚を失った重症患者に普通の人間が呼吸している空気は害がある。ブラコフは厳重に守られていた。
ハイネが女2人を庇ったのだとしたら、ブラコフは彼等から少し離れていたのだろう。もしハイネが彼を庇っていたら、女性2人はこの若者みたいな状況に陥ったはずだ。女性が顔を失うのは耐えられないことだ。男だって苦しいのに。
出産管理区に預けている女性2人の回診結果がヤマザキの端末に送られて来た。アイダ・サヤカは忠実に働く人だ。セシリア・ドーマーがハイネを刺したと聞いているので、彼女に麻酔を与えて当面眠らせておく、と連絡してきた。セシリアは鼻骨骨折が一番大きな怪我なので、目が覚めれば動ける。覚醒状態にしておくのは危険だった。
エヴァンズはまだ昏睡状態が続いていた。脳内の出血は止まったので、彼女の意識が戻るのを待つだけだ。本来なら親族を呼んで、彼女に語りかけてもらえれば覚醒のきっかけを作れるのだが、地球にいてはそうもいかない。民間人が地球に来るにはややこしい手続きが必要だし、今は地球周回軌道防衛隊が航路を封鎖している。
外来に行くと、前日生化学フロアで爆発で生じたガスを吸い込んでしまった人々が再診を受けに来ていた。喉の火傷の経過をチェックし、肺の状態を改て検査したりしていると、すぐにお昼になった。
食欲がなくても規則正しい時刻に食べることにしているヤマザキは中央研究所の食堂へ足を運ぶつもりでロビーに行った。するとケンウッド長官が慌ただしく駆け込んで来た。後ろにヤマザキが見知らぬ中年の女性がいた。